何が変わった?「働き方改革」の内容と企業が取り組むべきポイント

何が変わった?「働き方改革」の内容と企業が取り組むべきポイント

2019年4月1日より「働き方改革関連法案」の一部が施行され、すべての企業がこの法改正への適切な対応を求められています。

しかし、働き方改革という言葉はよく耳にしますが、そもそも「働き方改革とは何か」「企業としてどのような対応が求められるのか」などの疑問を持たれるかもしれません。

今回は、働き方改革が必要とされた理由や背景、また企業に求められている取り組みについてご紹介します。

 

 

働き方改革とは

働き方改革とは、働く人々がそれぞれの事情に合わせて多様な働き方ができるよう、環境を整備する政府の取り組みのことです。

新たに制定された「働き方改革関連法」は、労働に関係する8つの法律「労働基準法」「労働時間等設定改善法」「労働安全衛生法」「じん肺法」「パートタイム労働法」「労働者派遣法」「労働契約法」「雇用対策法」に加えられた改正の総称です。

 

働き方改革が直面している3つの大きな課題

政府がこのような大きな改革に着手した背景には、日本が抱える3つの大きな課題があります。

  • 少子高齢化による労働力不足
  • 長時間労働と過労死の問題
  • 日本の労働生産性の低さ

①少子高齢化による労働力不足

少子高齢化により、労働の主な担い手である生産年齢人口(15~64歳)の減少が見られます。労働力の減少により企業の生産性が落ちると、GDPや税収の低下を招くため、政府にとって労働力不足の解消は喫緊の課題となっています。

②長時間労働と過労死の問題

日本では長年、会社のために自分を犠牲にして働くことが美徳とされてきました。結果、長時間労働が常態化しており、過労死をはじめとした様々な問題(精神障害、自殺、重大な健康リスクなど)を招いていると考えられています。 

また、育児や介護などの理由で短時間での勤務を希望する労働者にとって、働きにくい環境となっていることも問題視されています。

③日本の労働生産性の低さ

労働生産性とは、「労働者1人当たり、または1時間当たりに生み出す成果」のことで、労働者のスキルや生産効率を測るうえでの重要な指標です。実は、日本の労働生産性は、先進諸国の中で極めて低いことが報告されています。人口が減少するなかで、各企業の生産効率を維持または向上させるためには、労働生産性を高める必要があります。

働き方改革によって、これら3つの大きな課題の解決が期待されているのです。

 

労働時間法制見直しによって改正された8つのポイント

働き方改革の大きな柱の一つは、労働時間法制の見直しです。労働時間法制とは、労働者の働き過ぎを防ぐために設けられた、労働時間に関する法的規制のことです。今回、長時間労働の防止や、労働力不足の解消への取り組みとして、労働時間法制が見直されました。

労働時間法制の見直しは、2019年4月1日より施行が開始しています。改正された8つのポイントについてご紹介します。

①時間外労働の上限規制の導入

働き過ぎを防ぐために、時間外労働(残業)の上限が法律で明確に規制されました。特別な事情がない限り、時間外労働は月45時間(一日当たり平均2時間)、年360時間が上限となります。

臨時的な特別の事情があり、労使による合意がある場合でも、労働時間は月100時間未満、複数月平均80時間以内(1日当たり4時間程度)、年720時間までに抑えなければなりません。原則である月45時間を超えることができるのは、年間6ヶ月までです。

施行期日は2019 年4月1日ですが、中小企業への適用は2020年4月1日となっています。違反すると6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

②「勤務間のインターバル」制度の導入を促進

労働者の十分な生活時間や睡眠時間を確保するため、「勤務インターバル制度」の導入が企業の努力義務となりました。

労働者の終業時刻が残業などで遅くなった場合、翌日の始業時間を後ろ倒しにすることによって、一定の休息時間(インターバル)を確保しなければなりません。

③年5日の年次有給休暇の取得

年10日以上の有給休暇が発生している労働者に対して、企業は年5日の有給休暇を取得させることが義務づけられました。

これまで、労働者から年次有給休暇を申し出にくい状況もあり、取得率の低さが問題でした。改正後は、企業が労働者に有給休暇取得を希望する時季を進んで聴取し、希望を踏まえて取得時季を指定しなければなりません。 

対象者が年5日の有給休暇を確実に取得できるよう、企業は周知徹底する必要があります。一定期間経過した後、各対象者の取得状況を確認、再度取得を呼びかけることもできるでしょう。

違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがあります。

④月60時間超え残業の割増賃金率引き上げ

月の時間外労働時間が60時間を超える場合は、残業割増賃金率を「50%以上」にすることが規定されました。今回の改正により、中小企業の残業割増賃金率は、「25%」から「50%以上」に引き上げられることになり、大企業と同水準になります。大企業の残業割増賃金率に変化はありません。

⑤労働時間の客観的な把握

企業は、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況を適切な方法で把握するよう、法律で義務づけられました。あらかじめ定められた労働時間ではなく、実際の労働時間をタイムカードやICカード等で記録することにより、客観的に把握できるでしょう。

⑥「フレックスタイム制」の清算期間の延長

フレックスタイムとは、一定期間のあらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、働く時間を労働者が自由に決められる制度です。これまで1ヶ月単位だったフレックスタイム制が2~3ヶ月単位での適用が可能になります。

例えば、6月に法定労働時間を超えて働いた時間分、8月に休んでもらうことができます。労働者は、子育てや家族と過ごす時間のために、特定の月の労働時間を減らすことができるので、より柔軟な働き方が可能となります。また、3ヶ月の平均労働時間が法定時間内であれば、企業は割増賃金を支払う必要はありません。

⑦高度プロフェッショナル制度の導入

高度プロフェッショナル制度とは、特定の業種で一定の年収要件を満たした、専門的な職業能力を持つ労働者に、労働基準法に定められた労働時間、休息、休日および深夜の割増賃金に関する規定を適応しない制度です。

対象者は労働時間ではなく成果で評価されますので、労働時間に縛られない多様な働きと、労働効率の向上が期待されています。

とはいえ、企業は対象の労働者に対して、年間104日以上の休日を確保すること、健康管理時間の状況に応じて健康・福祉を確保するなどの措置を講じなければなりません。

⑧産業医・産業保険機能の強化

産業医とは、労働者の健康管理について、専門的な立場から指導や助言を行う医師のことです。労働安全衛生法により、労働者50人以上の事業場においては、企業が産業医を選定しなければなりません。

企業は、労働者の健康管理を適切に行うために必要な情報を、産業医に提供することが求められています。

 

「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」における3つのポイント

働き方改革のもう一つの大きな柱は、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保です。言い換えれば、正規雇用者(フルタイム労働者)と、非正規雇用者(パート・アルバイト・派遣労働者)を待遇の面で差別しないということです。

働く意欲のある方に納得のいく労働環境を提供することによって、労働力の増加が期待されています。

雇用形態に関わらない公正な待遇のために改正された、3つのポイントをご紹介します。

①不合理な待遇差の禁止

同一企業内において、正社員と非正規社員の間で、基本給や賞与など待遇の面で不合理な格差を設けることが禁止されました。

事業者は、パートタイム労働者・有期雇用労働者の賃金や福利厚生などの待遇を精査することができます。非正規社員の待遇が正社員と同じか、もしくは異なる場合は、その理由について「不合理ではない」と説明することができるか確認する必要があります。待遇差が「不合理ではない」と言い難い場合には、改善を検討しましょう。

不安な方は、同一労働同一賃金の原則的な考え方と具体例を示したガイドラインをご参照ください。

参照:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」

②労働者に対する待遇面での説明の強化

非正規社員は、正社員との待遇差について、事業者に説明を求めることができるようになりました。

非正規社員からそのような依頼があった場合、事業者は正社員との間の待遇差の内容や理由を説明する義務があります。事業者は、比較対象となる正社員と「職務の内容」「職務の内容・配置の変更の範囲」「その他の事情(成果、能力、経験)」など、待遇差を設けている理由について適切に説明しましょう。

説明を求めた労働者に対して、減給や解雇するなどの不利益な取り扱いを禁止する規定も追加されています。

③裁判外紛争解決手続き

事業主と労働者の間でトラブルが生じた場合、裁判をせずに解決できるよう、裁判外紛争解決手続き(行政ADR)が整備されました。当事者の一方、あるいは双方の申し出があれば、都道府県労働局が解決のために援助を行います。

「均衡待遇」「待遇差の内容・理由に関する説明」も行政ADRの対象に含まれているため、非正規社員も訴えやすい環境になったと言えるでしょう。

 

企業が取り組むべき4つの対応策

働き方改革への対応策として、企業には基本的な労務管理を見直し、改善していくことが求められています。具体的な対応策として4つの項目が挙げられます。

勤怠管理を適切に行なう

適切な勤怠管理は、フレックスタイムや勤務間インターバルの導入に欠かせません。また新たに規制された時間外労働の上限を守るためにも必要です。

企業はタイムカードや勤怠管理システムを活用して、労働者の勤怠状況をデータとして残しておくと良いでしょう。

36(サブロク)協定を締結する

36(サブロク)協定とは、「時間外・休日労働に関する協定届」のことです。労働者に対して、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働や休日勤務を行なわせる場合、労使間で36協定を締結する必要があります。企業は、書面により36協定を締結し、作成した協定届を、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。

36協定届は1年ごとの提出が勧められています。面倒な手続きに思われるかもしれませんが、時間外労働を見直し、コストを最低限に抑える良い機会になるでしょう。

助成金を活用する

働き方改革を社内で進めるためには、労力に加え資金も必要とします。資金が少ない中小企業は、助成金制度の活用を検討すると良いでしょう。

「働き方改革推進支援助成金」は、生産性向上のための設備投資や、勤怠管理のための設備導入、コンサルティングによる指導など、働きやすい環境づくりに取り組む中小企業を支援します。

参照:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善に取り組む企業を助成する制度です。

参照:キャリアアップ助成金(正社員化コース)

業務内容と配置を精査する

労働者の業務内容と配置を再検討することによって、不要な残業時間の削減や、非正規社員の待遇の改善を進めることができます。人員の補充や設備投資をすることなく生産性を向上できれば、企業にとって大きなメリットになるでしょう。

人件費を削減しつつ優秀な人材を確保するために、「社員の外注化」を取り入れている企業もあります。雇用ではなく、請負契約あるいは業務委託契約を結ぶなら、残業代や社会保険料などを削減することができます。また、契約解除に伴うトラブルを減らすうえでも効果的です。

 

働き方改革のメリットを最大限に活かしましょう

今回は働き方改革の内容と背景、企業として進めるべき対応策についてご紹介しました。昨今の社会情勢に伴い、労働者の働き方に対する考えやニーズが変化しているため、企業には適切な対応が求められています。

しかし、働き方改革に合わせて職場環境を整備することには、コストの削減や労働生産性の向上など、企業にとってもメリットがあります。

今回の内容を参考にして、社内における働き方改革を積極的に進めていきましょう。

 

 

執筆者 Toshiyu

Toshiyuさんプロフィール電力関連の仕事に13年従事、その後インドネシアに移住して一年のほとんどを海外で過ごす。現在はライターとしてフリーランス・副業・複業に関する記事を執筆。自由な働き方に挑戦する読者へ役立つ情報の発信を目指しています。

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