副業社員を採用するべき?採用のメリット・デメリット、注意点を解説

副業社員を採用するべき?採用のメリット・デメリット、注意点を解説

自由な働き方を推奨する政府主導の働き方改革の影響により、本業のほかに別の仕事を持つ、「副業社員」と呼ばれる方が増えています。

こうした副業人材を有効に活用することで、自社の問題や課題を解決している企業も増えているため、自社でも副業社員の採用を検討している人事担当者もいらっしゃるでしょう。

とはいえ、採用にあたって「副業社員の採用が本当に自社の課題の解決に役立つのか?」「採用する際の注意点は?」「副業社員を採用している事例は?」など、確認しておきたいこともあるかもしれません。

そこで今回は、副業社員の採用を検討している人事担当者が押さえておきたい、「副業社員を雇うことのメリットとデメリット」「採用に関して注意すべき労務管理」「副業社員の導入例」について解説します。

 

副業社員を雇うメリット

副業社員が会社に与えるメリットを把握することは、副業社員の採用を検討するうえでとても重要です。

ここでは、副業社員を雇う4つのメリットをご紹介します。

1.即戦力を得られる

副業社員は、すでに本業で十分な経験とスキルを持ち合わせているため、採用後すぐに即戦力としての働きを期待できます。

未経験者を新規採用する場合のように、育成のための時間やコストがかからず、採用したものの期待外れだったというような採用のミスマッチを避けられます。

2.社員のスキルアップにつながる

副業社員とともに働くことで、自社の社員が副業社員のスキルや経験から学ぶことができるため、スキルアップにつながります。

人材やノウハウが不足しがちなスタートアップ企業や、専門性の高い部署やプロジェクトを立ち上げた企業にとって、副業社員は貴重な存在といえるでしょう。

3.低コストで採用できる

業務委託契約により副業社員を採用する場合、基本的に福利厚生や保険関連、残業代などの費用が必要ありません。

出社の必要がないリモートワークであれば、作業スペースやデスク、オフィスチェアなどの備品もそろえる必要もないでしょう。

コストをかけずに人材を確保できるのは、副業社員を採用する大きな魅力の一つといえます。

4.必要なときだけ雇える

時季によって仕事量が大きく変わる業種においては、適切な人員確保は大きな課題となるかもしれません。

忙しいときに備えて社員数を増やすと、忙しくないときに人材やコストが余分にかかりますが、社員数が少ないままでは繁忙期に既存社員に負担がかかってしまいます。

副業社員は、業務委託契約によって契約期間を定められるので、忙しい時期だけ雇うことで効率的に採用を進められます。

契約で定めた期間が終了すれば業務委託契約を終えることができますが、会社と副業社員の双方が合意した場合は、契約の継続も可能です。

副業社員を雇うデメリット

副業社員を雇うことにはデメリットも存在します。しかし、事前にデメリットや起こり得る問題を把握し、対処することでデメリットを軽減できるでしょう。

ここでは、副業社員を採用する2つのデメリットと対策をご紹介します。

1.情報漏えいのリスク

副業社員が会社のデータベースにアクセスできたり、会社独自のノウハウを知り得る立場にいたりする場合、機密情報漏えいのリスクが高まります。

副業先で得た情報を、副業社員が本業先で流用すると、会社の業績や顧客との信頼関係に深刻な影響を与えかねません。

情報漏えいを防ぐために、以下のような対策を行えます。

  • 会社のデータベースへのアクセス権を与える場合は、必要な情報に限定するなどの設定をする
  • 守秘義務に関する誓約書を交わす
  • 会社の機密事項の社外への持ちだしや、知り得た情報の流用を禁止し、違反した場合は懲戒事由に抵触する旨を就業規則に明記する

2.できる仕事が限定的

一般的に、副業社員は平日の夜や土日祝日など、本業以外の時間を利用して副業先で働くことになるため、勤務時間は短く、行える仕事は限られます。

副業社員がもつ専門的なスキルや経験を、限られた勤務時間で効果的に発揮できようにするためには、「重要度が高く緊急度の低い業務」を割り当てましょう。

例として、以下のような業務が副業社員に向いています。

  • 社員へのコンサルティング
  • 1日数時間、あるいは週末だけ必要とするルーティン作業
  • 会社のリソースを割けない後回しになっている業務

副業社員の雇用には労務管理に注意が必要

副業社員を雇う際のおもな契約形態として、「業務委託契約」と「雇用契約(アルバイト・パートを含む)」の2つがあります。

契約形態の違いによって、会社が行うべき労務管理が大きく変わるため注意が必要です。

雇用契約の場合に注意すべき労務管理

短時間とはいえ、会社の従業員として副業社員を雇う場合は「労働時間」「労災保険」「雇用保険」「社会保険(健康保険・厚生年金保険)」について労務管理が必要です。

労働時間

労働基準法により、従業員の法定労働時間は「原則1日8時間、週40時間」までと定められており、この時間を超えた労働時間については法定時間外労働とみなされます。ここで注意したいのは、2社以上で働く労働者の労働時間は合算されるという点です。

注意を要する1つ目の例として、A社で1日7時間働いた社員が、その日副業社員としてB社でも1日2時間働く場合、通算で1日9時間働くことになるため、1日の法定労働時間8時間を超えた1時間については法定外労働となります。

2つ目の例として、A社で1日8時間・週5日働いている労働者はすでに1週間当たりの法定労働時間40時間に達しているため、土日などに副業社員としてB社で5時間働いたとすると、その5時間は法定時間外労働とみなされます。

この2つの例のように、副業社員を法定時間外労働時間に働かせるためには、後で雇用した会社が、労使間で36(サブロク)協定を書面にて交わし、所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

また、法定時間外労働については、割増賃金を払わなければなりません。法定労働時間の算定の仕方については、以下のページをご参考ください。

参照:副業・兼業|厚生労働省

労災保険

労災保険は、業務中や通勤中の災害により働けなくなった従業員に、保険給付を行う制度で、加入条件を満たしたすべての事業者が加入しなければなりません。

例えばA社とB社に勤める労働者が、A社の勤務中に起こった労働災害によりけがをした場合、A社の労働保険が適用されますが、もし休業が必要になった場合は、A社B社両方の賃金を合算して休業補償給付額が計算され給付されます。

2社以上に勤務している場合、通勤途中の災害については起きた経路により手続きを行う会社が決まります。

例えば、同じ日にA社とB社に勤務する場合、「自宅からA社への通勤中」の災害についてはA社が手続きを行いますが、「A社からB社への通勤中」「B社から自宅への帰宅中」に起きた災害については、B社が手続きを行う必要があります。

労災保険の適用については、以下のページをご参照ください。

参照:ダブルワークをするなら知っておきたい保険の加入条件と注意点

雇用保険

雇用保険は、失業などで働けなくなった労働者の生活を保障する保険制度です。条件を満たした従業員は、勤務先で雇用保険に加入しますが、2社以上に勤務している従業員は、条件を満たしている勤務先から一つを選んで加入します。

A社とB社で働く副業社員が、雇用保険に加入していたA社を退職するなどして雇用保険から脱退した場合、加入条件を満たしている方はB社で再加入手続きを行います。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)

社会保険には、医療機関を利用する際の医療費の負担を軽減する「公的医療保険」と、加入期間に応じた年金が将来受け取れる「厚生年金保険」が含まれます。

加入条件を満たしていれば、勤務している複数の会社で社会保険に加入することになります。社会保険料は、勤務先から得ている賃金を合算して計算され、それぞれの賃金に合わせて配分されます。

社会保険加入条件を満たす従業員を雇う場合は、会社が「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。

2社以上で社会保険に加入する副業社員は、「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を届ける必要があるため、会社は、適切な手続きが進められているかを確認する必要があるでしょう。

社会保険加入の手続きについては、以下のページをご参照ください。

参照:ダブルワークをするなら知っておきたい保険の加入条件と注意点

業務委託契約の場合の労務管理

副業社員を業務委託契約で雇う場合は、「労働時間」「雇用保険」「労災保険」「社会保険(健康保険・厚生年金保険)」などの労務管理について、特に行う必要はありません。

しかし、契約時に副業社員が上記のような保険や保障の対象にならないこと、例えば業務中や通勤中に起こった災害について、保険給付を受けられないことなどをしっかりと伝える必要があるでしょう。

偽装請負に気を付ける

副業社員の労務管理の負担が少ない業務委託契約は、働き方にいくらかの法的制限があり、これに違反すると偽装請負となるため注意が必要です。

代表的な例として、クライアントが発注した業務を、会社が副業社員に委託する場合、クライアントが直接、あるいは間接的に業務に関する指示や命令を副業社員に与えると、「労働者派遣」とみなされ偽装請負になってしまいます。

偽装請負については、以下のページをご参考ください。

参照:あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ? | 東京労働局

副業社員採用の事例集

近年、自社の社員に副業を認めるだけではなく、有用な人材として副業社員を積極的に採用する企業も増えつつあります。

ここでは、副業社員採用に取り組む3社の事例をご紹介します。

1.ヤフー株式会社

参照元:ギグパートナー募集 – 採用情報 – ヤフー株式会社

インターネット企業大手ヤフー株式会社は、2020年7月15日にプレスリリースにて、副業社員として働くことを希望する方を「ギグパートナー」と呼び、大量に募集することを発表しました。

ギグパートナー募集の専用ページには、応募の概要やFAQなど応募に必要な詳しい情報が掲載されています。また、この専用ページから希望するポジションへのエントリーが簡単に行えるようになっています。

応募条件に年齢制限はなく、学生や未成年者(親権者の同意が必要)、在留資格をもつ外国籍の方も応募可能となっており、垣根なく幅広く人材を募集。

勤務形態は原則テレワークとなるため、国内外のどこからでも勤務が可能なことや、労働時間にも制限がないことなど、副業社員にとって働きやすい魅力的な環境といえるかもしれません。

2020年10月28日の当社のプレスリリースによると、4,500人以上の応募者の中から選ばれた10歳から80歳までの計104名が業務を開始したことが伝えられています。

会社名 ヤフー株式会社
契約形態 原則として業務委託
職種 事業プランアドバイザー
戦略アドバイザー
勤務地 原則として出社をともなわないオンラインでの業務
詳細ページ https://about.yahoo.co.jp/hr/gigpartner/

2.ユニリーバ・ジャパン株式会社

参照元:WAAP -Work from Anywhere & Anytime for Parallel careers-

ユニリーバ・ジャパン株式会社は、2020年7月17日より、誰でもユニリーバ・ジャパンでの副業やインターンシップにチャレンジできるプラットフォーム「WAAP」(Work from Anywhere & Anytime with Parallel careers)を開設しました。

「WAAP」のウェブサイトに掲載されているプロジェクトの中から、副業したいものを選び、自由に応募できます。

期間はプロジェクトごとで3カ月~1年ほどになりますが、成果さえ出せば稼働時間に関して明確な決まりはなく、自分の裁量とペースで副業を行えるのが特徴です。

年齢(原則20歳以上の社会人)や性別、国籍、働く場所に制限はなく、WAAPの選考過程では顔写真、ファーストネーム、性別欄を排除するなど、ユニークな取り組みがなされています。

個人での応募のほか、コロナの影響で雇用を確保したい企業や、インターシップの機会を探す大学とも提携し、人材の受け入れに力を入れています。

会社名 ユニリーバ・ジャパン株式会社
雇用形態 正社員、インターン
職種 「WAAP」に掲載されているプロジェクトによる
勤務地 業務は原則すべてオンライン
詳細ページ https://www.unilever.co.jp/careers/parallelcareers/

3.サイボウズ株式会社

参照元:複業採用今の仕事を続けながら、サイボウズでも働きたい方を募集しています。

「100人いれば、100通りの働き方」を掲げるサイボウズ株式会社は、多様な人々が多様なスタイルでつながるチーム作りを目指し、複業(副業)採用を積極的に行っています。

応募できる職種は「エンジニア職」「ビジネス職」「コーポレートスタッフ(経理や人事など)」です。

複業採用向けの業務があるわけではなく、応募者の経験スキルに合わせて複業が可能な業務を作っていくというスタンスのため、応募者の希望職種や希望勤務形態に応じて業務が検討されるようです。

契約形態は業務委託だけではなく、正社員や契約社員なども用意。応募者と相談のうえ、契約形態を決めています。

会社名 サイボウズ株式会社
雇用形態 正社員、契約社員、業務委託など応相談
職種 エンジニア職
ビジネス職
コーポレートスタッフ(経理や人事など)
勤務地 基本的に全職種在宅勤務可能、一部の職種においては拠点近郊での勤務が前提
詳細ページ https://cybozu.co.jp/company/job/recruitment/fukugyou/

副業社員採用は有用な人材獲得のチャンス!

働き方改革や働く人々の意識の変化により、多様なワークスタイルへの理解が進み、副業を希望する方が増えています。

多くの企業でそのような方々を支援する形で副業を認める流れになっており、最近では、副業社員を採用するメリットに注目する企業によって、副業社員の積極的な採用が行われています。

副業社員の採用には、情報漏えいや割り当てられる業務が限られるなどのデメリットもありますが、事前に対策を講じることで軽減が可能です。また、業務委託で契約すると、労務管理の面で負担を減らせます。

現在、副業市場は依然として供給(副業社員)が需要(副業案件)を上回っているため、優秀な人材であふれているといえるでしょう。

もし、社員のスキルアップや即戦力の確保、コスト削減、適切な人員配置などの課題を自社で抱えているのであれば、この機会に経験豊かな副業社員の採用を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

執筆者 Toshiyu

Toshiyuさんプロフィール電力関連の仕事に13年従事、その後インドネシアに移住して一年のほとんどを海外で過ごす。現在はライターとしてフリーランス・副業・複業に関する記事を執筆。自由な働き方に挑戦する読者へ役立つ情報の発信を目指しています。

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